こんにちは!カバー株式会社 技術ブログ編集部です。
2026年4月24日(金)に、「hololive production official shop in Harajuku」が東京・原宿に新しくオープンしました。
原宿店ならではのスペシャルコンテンツのひとつとして、「空間再現ディスプレイ」が店舗に設置されています。裸眼で立体映像を体験できるソニーの空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」を活用し、ホロライブのタレントが出演する原宿店限定の立体映像コンテンツをお楽しみいただけます。
本記事前半では、アプリの開発を担当したHoさん(技術開発部)・Oさん(配信技術部)と、店舗の企画立ち上げを担当したBさん・Saさん(コマース本部)の4名へのインタビューを実施しました。後半では、アプリ開発担当のHoさんから、開発時のポイントなどをご紹介いただいております。
自発的に行われていた「社内デモ会」
——皆さんの普段の業務と、今回の空間再現ディスプレイ企画における担当について教えてください。
クリエイティブ制作本部 技術開発部のHoです。2023年に新卒でカバーに入社して、今年で4年目になります。普段は、3Dライブや生誕配信などでスタジオで使用している「スタジオアプリ」の開発をしています。今回は、店舗に設置するディスプレイのアプリ部分のシステム開発を担当しました。
Hoさんの過去の執筆記事はこちら↓
クリエイティブ制作本部 配信技術部 モーションキャプチャーチームのOです。モーションキャプチャーチームはスタジオに導入しているモーションキャプチャシステムの運用などを行うチームなのですが、私はそのチームのマネジメントや、エンジニアと企画側の橋渡しをするテクニカルコーディネーター的な役割を担っています。今回はコマース本部からの要望を聞いて、アプリの仕様の策定と、タレントさんの収録周りの技術面を担当しました。
コマース本部 事業開発部の部長をしておりますBです。国内ではECを除く販路、海外ではEC含む販路全体を管掌しています。今回はプロジェクト全体の監督という立場で関わりました。
Bさんの直属の部署で、公式店舗チームに所属しているSaです。普段は3つのホロライブ公式店舗全体のプロモーション施策を担当しておりまして、今回の空間再現ディスプレイについては、最初の導入企画から現場のオペレーション策定まで、社内外の実務全体を担当しました。

——まず、何がきっかけで原宿店舗に空間再現ディスプレイを導入しようと企画したのでしょうか?
原宿店は、既存の東京駅店との差別化を狙い、商品以外の価値を創出するというのをミッションにしていました。その中で体験型コンテンツを検討していたところ、ソニーさんから空間再現ディスプレイをご提案いただきました。その際に見せてもらったサンプルが体験したことのないもので、ぜひ導入したいとその場で思いました。そんなにスペースを占めるわけでもなく、店舗内で実現できそうなフィジビリティ(実現可能性)がすぐ見えたのも大きかったですね。そこからこの企画を形にするために、配信技術部に声をかけ、アプリ開発などをお願いすることになりました。
——それと同じ頃、Hoさんは独自に社内で空間再現ディスプレイのデモ会をされていましたね。
はい、実はクリエイティブ制作本部では、CTOの福田のご紹介をきっかけに、ソニーさんの空間再現ディスプレイのサンプルをコマース本部の皆さんより先に拝見していました。その際、「将来的に活用機会がある」と判断し、先手を打って空間再現ディスプレイを購入していた経緯があります。どのチームから要望が来ても迅速に実装へ移れるよう、事前に研究・準備を進めていた、という背景です。こうした取り組みはCTOの先見性によるところが大きく、チーム一同、感謝しています。
自分は学生時代の研究分野が立体視技術などに近いところがあって、これをどう活用できるか個人的に興味を持っていたんです。上長との1on1でその想いを話したところ、じゃあ自分でコンテンツを作ってデモ会をやってみようという流れになりました。
——技術開発部では、そういった個人的な技術検証を行えるんですね。
制度として明文化されているわけではないのですが、業務に関わらない範囲でも、ある程度工数を使って自分の興味や研究開発的なことができる風土ではあります。実際に、VRなど、興味を持った技術の研究開発に取り組んでいるメンバーもいますね。
——デモ会はどのような狙いで開催したのでしょうか?
3つぐらい狙いがありました。
まず、具体的な企画案を発掘したかった。自分のチーム内にはエンジニアしかおらず、エンジニアだけでどのイベントで使うとか、どういうコンテンツを作るかを決めて進めていくのは難しいと感じていたので、社内の企画や営業の方々の考えを聞いてみたいなと。
それと、自分は立体視などの技術にものすごく興味があったので、これは面白いものというバイアスがかかっているんじゃないかという自覚があって、「これ、本当に面白いんだっけ?」という確認をしたいとも考えていました。
あとは、空間再現ディスプレイは動画だけだと体験が十分には伝わらないと思っていたので、実際に見てもらう場が必要だなと考えていました。
——反響はいかがでしたか?
複数回やって、合計50名以上にアンケートに答えてもらいました。大体ポジティブな反応で、何か企画をやりたいという話もいくつか出てきたので、アプローチすれば繋がれる状態にはできそうかなという感じになりました。

別々に動いていた流れがまじわって
——デモ会と原宿店舗のプロジェクトはどのように連携が始まったのでしょうか?
以前、私がスタジオへ社内営業に行ったことがあって、その時に関係部署の方々とお会いしていたんです。空間再現ディスプレイの企画を立ち上げた際に、その接点から配信技術部へ声をかけることになりました。
ただ、最初はどの部署が適切な相談口かがわからなくて、探り探りでご連絡させていただきました(笑)。
お話をいただいた時に決めた方針としては、前例のないものの開発だったため、最小限の精鋭を集めて開発を進めることとしました。Hoさんがそういうのを作っているのは知っていたのと、他の案件でも関わりがあり、やり取りもしやすいHoさんを巻き込みたいなと思って声をかけました。
——別々に動いていたふたつの流れが、ここで交わったわけですね。そこから、開発はどのように進めていったのでしょうか?
店舗チームの皆さんのご要望をお聞きして仕様を組み、Hoさんに渡して開発していただく分担でした。仕様を渡せばほとんど説明なしに形にしていただけるくらい、スムーズに進みましたね。演出の中でタレントさんがお客様と一緒に自撮り写真を撮影して、その写真を見せてくれるというものがあるのですが、半ば無茶振りでHoさんにやりたいと相談したら「できそうですね」と即答いただいて、そのまま実装されました(笑)。
——他にこだわった点はありますか?
立体視というところで、タレントさんとつながっているみたいな実在感をすごく意識しました。目線が合うとか、こちらに向かって出てくるとか、そういった演出を大事にして作成しました。
店舗チームとしては、制作してもらったコンテンツ自体がすごく良いので、とにかくそれに集中してもらいたい、没頭してもらいたいなと考えました。Hoさん、Oさんにも実際に現場に足を運びつつオペレーションの策定に関わっていただき、環境面や運用面でネガティブな意見が出ないように注力しました。什器もOさんチームと一緒に特注のものを設計・発注していて、ファンの方々が最大限の没入感を得られるようにこだわりました。
サウンド面では、配信技術部サウンドチームのKさんにご担当頂き、空間再現ディスプレイの没入感に合わせて、従来のステレオ2chではなく、5.1chサラウンドによる実験的アプローチを試みました。お客さんの立ち位置(定位)が固定される特性を活かした、「視聴者がその空間にいれるような臨場感」を意識した音響を制作して頂いています。また、5.1chの番組概念を捨てて、効果音をリアスピーカーメインに配置することで、多角的な音響空間を構築しています。什器面では設備チームのOさん、Yさんにご対応頂きまして、シンデレラフィットに拘ったミリ単位の寸法合わせ、没入感を意識した重厚なデザイン、安全面を考慮した耐久・耐震施工、カメラやPCの配線のための金属加工、仕様に合わせた5.1chスピーカーの選定など、随所に細かな苦労と拘りが詰め込まれています。設備チームには事前準備はもちろん、店舗への設置からバックアップ機材の配備、店舗スタッフへの操作レクチャーまで一括で担当頂きました。

97パーセントが「星4」以上の満足度
——少数精鋭で強く連携しながら開発を進めたのですね。オープン後の反響はいかがですか?
視聴者アンケートを都度行っているんですけれども、97%の方に星4以上をつけていただいているような状況です。タレントさんとの近さや存在感、目の前の自分に語りかけてくれているみたいなインタラクティブな体験を非常にご好評いただいております。「他のタレントさんでも展開してほしい」というご意見も非常に多くあります。
——では、当初のミッションの「東京駅店との差別化」は、成功ということですね?
お客様が喜んでくれているので、十分成功だと思っています(笑)。
——一方で、現地でないと立体視の凄さが実感できないがゆえの難しさもあります。
体験していただいた方が「これは実際に見た方がいい」とSNSでもすすめてくださっているので、それで見に行こうという気持ちになっていただいて、さらに拡散していただければなと、というのが正直なところです。また技術的な制約上、1日に対応できるお客様の人数が限られてしまうのも課題のため、よりストレスなく楽しんでいただくための改善案を検討しているところです。

——今回は、普段あまり関わりのない部署同士の連携でもありました。こうした部署間の連携について、現状や今後の展望をどうお考えでしょうか?
やりたいことに適した知見を持つエンジニア側とのつながりを作るには、現状、社内営業をかけるなど自発的に動く必要がありますね。お客様に新しい体験価値を届けることも私たちのミッションなので、新しいアイデアを求めて外部のショールームなどに足を運ぶことも多いです。ただ、今回のHoさんのデモ会のようなエンジニア側からの発信や、先日の社内技術ショーケースのように、社内でも新しい技術に触れ、エンジニアと企画側が接点を持つ機会は着実に増えてきていると感じます。
もっとカジュアルに使いたい側と使ってほしい側がマッチングできる仕組みがあるといいですね。当社は豊富な種類のVR機器やトラッキング機材が揃っていたり、エンジニア側から自発的にデモ会をやったりする風土があるといった環境は揃っているので、あとは社内での繋がりが生まれやすくなれば、もっとさまざまな企画を具現化できると思います。
私たち企画側は技術の知識が浅く、わからないことが多いので、やりたいことがあっても具体化が難しいんです。気軽に「こういうことができる」と教えてもらえたり、カジュアルにアイデアをブレストしたり、体験できる場があるといいなと思います。
——エンジニアの「使える技術を知ってほしい」と、企画職の「使える技術を知りたい」。お話を伺うと、向かう先は同じなのだと感じます。探り探りでも、動けば繋がる。今回のプロジェクトは、その確かな一歩になったのではないでしょうか。本日はありがとうございました。
空間再現ディスプレイ展示アプリの開発について
はじめに
こんにちは、技術開発部のHoです。今回は「hololive production official shop in Harajuku」の店舗に設置されている空間再現ディスプレイの展示に、アプリ開発エンジニアとして参加しました。この記事では、開発に関わったエンジニアの視点から、展示アプリの開発について紹介します。
空間再現ディスプレイについて
今回、原宿店で使用したディスプレイはソニーの空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」です。ELF-SR2は、内蔵の視線認識センサーで体験者の顔を検出したうえで、体験者の視線を認識・追従し、左右それぞれの目に最適化した映像を表示することで、裸眼で立体視ができるディスプレイです。左右の目に異なる映像が届くことで立体的に感じられる仕組みのため、動画や写真に撮影したものを見ても同じ体験にはなりません。以下では、このディスプレイ向けに開発したアプリについて紹介します。
店舗用アプリ開発
開発環境
今回のアプリはUnityを使用して作成しました。ELF-SR2に対応させるために、ソニーが無償提供しているSpatial Reality Display SDKのUnity向けPluginを使用しました。また、スタジオでの3Dライブや生誕配信に使用している「スタジオアプリ」 からステージやタレントさんの3DモデルやスクリプトをはじめとするUnityリソースをそのままインポートして流用しました。どちらもUnityで制作されたアセットであったため、追加の調整なく使用でき、開発工数の削減につながりました。
視線追従
Spatial Reality Display SDKのプラグインに含まれるスクリプトを使用することで、体験者の両眼の位置をリアルタイムに取得できます。取得した位置情報を使い、タレントさんの視線が体験者の方向を向くよう制御しています。この機能はスタジオアプリにも同様の仕組みがあったため、それを再利用する形で実装しました。


演出機能
演出の1つとして、体験者との自撮り写真を撮影する機能を実装しました。UnityからWebカメラを起動して写真を撮影し、タレントさんがその写真をパネルに入れて見せてくれる、という流れになっています。タイミング制御にはUnity Timelineを使用しました。写真撮影やカーテンの開閉など、各種トリガー用のスクリプトを作成し、それらをTimelineから発火できるようにしました。これにより、Timelineへの組み込みも担当したOさんがTimelineの操作だけで演出を柔軟に組めるようになり、それぞれが自分の役割に集中しながら作り上げられました。

収録・プレビューアプリ
普段の収録と異なる点として、今回は通常のディスプレイではなく空間再現ディスプレイ向けに映像を出力する必要があり、専用プラグインを含むアプリを用意しました。一から開発すると工数がかかりますが、既存のスタジオアプリがあったため、それを改造する形で対応しました。既存アプリをベースにしたことで、操作方法もほとんど同じになりました。収録スタッフは普段の収録に近い準備で臨みながら、収録中に空間再現ディスプレイでの実際の見え方をリアルタイムでプレビューできる環境を、効率よく構築できました。
おわりに
社内の既存アプリやスクリプト、3Dモデルなどを流用することで、効率的にアプリを開発できました 。実際に体験されたお客様から好評をいただいており、開発に携わったエンジニアとしてとても嬉しく思っています。この体験は実際に現地でしか味わえませんので、ぜひ原宿店に足を運んでみてください!
